はじめに
トレードにおいて「チャートパターン」は多くのテクニカルトレーダーが意思決定の基礎とする要素です。フラッグ、三尊、Wトップ、トライアングルなど、セットアップが明確であれば、比較的素直に相場はその方向に動いてくれます。
しかしながら、そんな”素直なパターン”とは対照的に、テクニカルトレーダーの冷静さを奪ってしまう非常に厄介なパターンがあります。それが「拡大型トライアングル(ブロードニングフォーメーション)」です。
拡大型トライアングルとは何か

このパターンの特徴は、上下に拡大していく価格の振れ幅です。高値を更新したかと思えば、次の瞬間には安値を更新し、またその次には高値をさらに更新してくる。
このように、まるで相場に振り回されているかのような展開が続き、感情的になってしまうトレーダーは往復ビンタを喰らうだけでなく、冷静さを失い撤退を余儀なくされることさえあります。
なぜこのようなパターンが発生するのか
私なりにこのチャートパターンの発生メカニズムを研究したところ、背景には「ポジションの刈り取り」と「フェイクアウト」という2つの要素が大きく関係していると考えています。
1. ポジションの刈り取り
相場には「順行する前に逆方向に動く」という特性があります。例えば、市場が上昇トレンドに入りたいと思っていても、その時点で市場に買いポジションが多く存在すると、上昇するたびに利食い売りが入り、思うように伸びないことがあります。
このとき、機関投資家などの大口が「軽い相場」を作るために一度下げることがあります。具体的には、個人投資家などの損切りポイントを刈り取るように価格を下げ、その後に一気に上昇するという操作的な動きです。
2. フェイクアウト
もう一つの要素がフェイクアウトです。これは順行させたい方向とは逆方向に一旦価格をブレイクさせ、そこに飛びついてきたトレーダーの損切りを利用して価格を動かすという動きです。
この動きは極めて強力で、素直なテクニカルトレーダーほど巻き込まれてしまう傾向があります。
どこで発生しやすいのか
この拡大型トライアングルパターンは、上位足と下位足のトレンドがぶつかるポイントで発生しやすいです。
例えば、1時間足で明確な上昇トレンドが出ているときに、日足で見るとその流れは実は単なる調整でしかなかったというケースがあります。このように、異なる時間足におけるトレンドフォロー勢の売買がぶつかると、価格は激しく上下に振られることになります。
また、短期トレーダーが仕掛けた後に、長期トレーダーの逆方向の注文が入るといった時間軸のズレも、拡大型トライアングルが生まれる要因です。
ムキになるな、冷静に立ち回れ
このパターンにハマると、最初のエントリーで損切りに遭い、その後順行する流れを見て悔しくなってムキになって再エントリーし、またやられるという悪循環に陥りがちです。
特にテクニカルに素直なトレーダーほど、「正しいセットアップを信じるあまりに何度も仕掛けてしまう」ことが多く、結果として大きな損失を出してしまいます。
こういった時こそ、「一歩引いて様子を見る勇気」が必要です。
テクニカル的な目安:奇数の波動と7波目の意識
一般的に、拡大型トライアングルは7波で収束すると言われています(もちろん例外もあります)。
つまり、上下に拡大しながら波動が進行し、7波目で明確にどちらかにブレイクしていくというパターンです。
とはいえ、毎回7波でブレイクするわけじゃないですし、何波目にいるのかをカウントするのも至難の業です。大切なのは、そうした動きが出ている可能性にいち早く気づくことです。
私なりの対処法
では、どうすればこの厄介なパターンを乗り越えることができるのでしょうか? 私なりの対処法は以下の2点です。
1. 早めに認識すること
値動きの中で「高値も安値も更新してくる」パターンに気づいたら、それが拡大型トライアングルである可能性を真っ先に疑うべきです。
ここで無理にエントリーするのではなく、まずは様子を見る。ブレイクが明確に出るまで待つ。
2. 損切りされた後の順行に注意
最初のトレードで損切りにあったとしても、その後順行方向に価格が更新された場合は、再エントリーのタイミングではありません。
買いの場合なら、高値を更新した後、しっかりと安値を切り上げる調整が入るまで待つことが大事です。そこを確認せずに飛びつくと、また直近安値を割られて損切りになります。
まとめ:波を読む力を磨こう
拡大型トライアングル(ブロードニングフォーメーション)は、テクニカルトレーダーにとってまさに天敵といえる存在です。
ただし、それが存在することを知り、対処法を持って臨むことで、大きな損失を回避し、トレードの質を上げることは可能です。
無理せず、ムキにならず、波を読む力をじっくりと磨いていきましょう。